宇土の不動明王と毘沙門天

 

 

 

 

 

岡山県小田郡矢掛町と美星町の境にある美山川ダム(鬼ヶ嶽ダム)から西方へ1キロのところの宇土八幡神社から北の山頂一帯には、無数の大岩が積み重なるように転がっている。その中の1つに不動明王と毘沙門天の磨崖仏が彫られている。幕末の万延元年(1860年)の制作の刻銘がある。この像の左手前には、役行者の磨崖仏が彫られた別の岩があり、嘉永六年(1853年)と刻銘されている。かつては、地元ではこれら両磨崖仏を、山上(さんじょう)さまと呼んでお参りをする人がいたという。しかし、現在では、この山上さまの西南一帯は開墾されて畑や道路になっており、上り口も参道も分からない状態になっている。地元の人に聞いても、その存在すら知らない人が多く、今回もここに至りつくのに非常に苦労した。いろいろ世間話をしているうちに、一人の女性が、50年前の子供の頃、一度だけ親に連れられて行ったことを思い出し、道のないところをたどたどしい記憶をたどりながら、案内してくれた。こうしてやっと、山の奥に長い間ひっそりと佇む山上さまと出会うことができたが、このときの感動は言葉には表せない。

HOME  吉備の国古跡・史跡めぐり  磨崖仏